桃太郎フォーラム2026を開催
教学企画室は、2026年9月11日に本学津島キャンパス一般教育棟A棟2階A21教室にて桃太郎フォーラム2026を開催しました。本学の教職員、大学院生のほか、学外からも多数の参加があり、参加者は150名を超える規模となりました。
第29回目の開催となる今回は、テーマを「次代の大学院博士課程教育」とし、博士課程の教育に焦点を当てました。学内外から多角的な知見をお持ちの登壇者をお招きし、様々な立場から博士課程教育の現状と課題を見つめ直し、今後を展望するものです。
菅誠治理事(教学担当)・上席副学長による開会挨拶に続き、田中岳副学長(教育・入試改革担当)と登壇者によるライトニングトークが行われました。田中氏は、事例報告の発表順をその場で決めるといったサプライズを交えつつ、参加者の興味の焚きつけ(ライトニング)のために、事例報告者4名に意気込みや各発表の注目ポイントをインタビューしました。それに続き、趣旨説明として、新幹線とリニアモーターカーを例えに、これからの大学院教育改革は、新幹線の改良、つまり現状の大学院制度の延長線上にある改善ではなく、リニア開発のように新たな大学院の形を作る革新的な視点で議論を行っていくことの重要性を強調しました。その後の事例報告は以下のようなものでした。

■4名の事例報告
立石慎治氏(筑波大学)は、博士課程教育における内部質保証をテーマとした話題提供を行いました。現在の政策動向の要点を振り返ったのちに、筑波大学における内部質保証の取組を紹介し、大学院定員の3倍増によって想定される状況と質保証上の課題について提示しました。さらに、それらの要素と相互関係をシステム思考で活用するループ図を用いて精緻に可視化し、会場の参加者に対して、それぞれが図中の要素や課題にどう関わるのかを問いかけました。
荒木杏奈氏(三菱総合研究所)からは、イギリスの博士人材育成についての事例紹介がありました。博士人材支援策に関する5つの「もっともらしい話」を問い直す視点から、英7大学が共同運営するプログラム(WRDTP)を取り上げ、行政・企業・非営利組織・大学など多様な社会との関わりを通じた能力形成やキャリア形成の取組を紹介しました。また、博士人材の育成は指導教員だけでなく、学内の専門職や実践経験の受け入れ先等が役割を分担して支えていることを示すとともに、学生一人ひとりの研究課題や進路に応じて適切な機会を選び、継続的に見直していくことの重要性を指摘しました。
本学において博士課程学生のキャリア支援に取り組んできた町田尚史氏(岡山大学)は、博士人材には高度な専門性に加え、汎用的能力が求められると論じました。OECD等の定義を紹介するとともに、本学が行ったアンケートの結果から企業が博士人材に求める能力の実態や本学博士課程学生の進路選択能力の分析について話題提供を行いました。また、博士取得者の増加やAIの急速な発達といった社会の変化についても言及し、今後の博士人材育成に必要となる意識改革について提言しました。
最後に、竝木茂朗氏(文部科学省)から、行政の視点からみた大学院教育について話題提供が行われました。大学院制度の歴史や近年の答申・政策動向、現在検討が進められている新たな評価制度について論点を整理しながら紹介するとともに、産業界や他省庁の関与の拡大に伴い、大学院政策を取り巻く文脈が変化してきたことを提示しました。加えて、教育研究の現場で指摘されている制度的課題についても触れ、これらの論点についてパネルディスカッションで議論が深まることへの期待を述べて講演を締めくくりました。
■指定討論及びパネルディスカッション
パネルディスカッションでは、まず指定討論者の丸山和昭氏(名古屋大学)が登壇し、4つの話題提供を踏まえて論点を整理しました。その上で、博士人材を取り巻く課題を「教育」によって解決しようとしすぎていないか、また、博士課程にいる多様な人々を「学生」と一括りにしていないかという問題提起がありました。
その後、事例報告者に加え、パネリストとして鶴田健二氏(岡山大学)、モデレーターとして和賀崇氏(岡山大学)が加わり、討論が行われました。討論では、各事例報告者への質疑応答や意見交換が行われたほか、丸山氏が提示した図(これまでの大学院に閉じて博士人材を育成していたモデルではなく、大学・大学院、政府機関、企業等との関係により博士人材を育成する新しいモデル、このモデルの名称やここで育成される所属先の名称といった構想)を手がかりとして、新たな集団の呼称や、大学院・研究室が教育として行いうること、行うべきこと、大学院・研究室以外が担うことなどについて活発な意見交換が行われました。

フォーラムの最後には、三村由香里理事(企画・評価・総務担当)より閉会挨拶があり、盛会のうちに終了しました。
参加者アンケート(26件/回収率17%)においては、96%以上の参加者が「満足」、「やや満足」と回答しています。また、事例報告についても、80%程度の参加者が「とても役にたつ」、「役立つ」と回答しており、今後の活動の参考になる機会であったことが分かりました。自由記述には、「大学教員の業務で比較優位は何なのかということを改めて考えさせられた」、「博士人材育成の課題は奥深く、大学だけでなく、産業界や行政を含む国全体で考えるべき問題であると感じました」等の感想が寄せられました。
なお、本フォーラムを広報するにあたり、広島大学高等教育研究開発センター「新着情報通知サービス」、愛媛大学教育・学生支援機構教育企画室「ぼっちゃんメーリングリスト」を利用させていただきました。末筆ながら、ここに記して感謝申し上げます。

